ラララ吉祥寺
「そうでしたか、事故で……」
わたしは父山本太郎に母の死のあらましを語った。
「で、お墓はどちらですか?」
「いえ、我が家に墓地はないので、骨壷も位牌もまだわたしの部屋にあります」
「そうですか。
じゃ、あとでお参りさせてください」
できれば分骨もお願いしたいし、と彼は付け加えた。
「それにしても、全然変わってないな、この家は」
懐かしそうに部屋を眺める彼の様子に、頑なに家の改装を拒んだ母を思い出していた。
わたしが窓をアルミサッシュに取り替えようと懇願した時も、頑として受け付けなかった母。
さすがに、風呂場が壊れた時は観念して、ユニットバスに取り替えることを渋々了解したのだけれど。
「……で、今は部屋を貸しているんですね」
母の死後、この家を売ろうして売れなかったこと。
その時初めて、山本太郎という名を知ったこと。
生活に困って部屋を貸すことを思い立ったこと。
ぽつりぽつりとかいつまんで、今の状況を父に伝えた。
「でもおかしいな、僕は毎年生活費としてまとまった金額を彼女宛に送っていた筈なのですが。
もしかして、宏子はそのお金には手をつけていなかったのかもしれませんね。
恐らく、貴方名義で何処かに……」
「えっ?」
「彼女の考えそうなことですよ」
彼はそう言うと、わたしに向かって笑いかけた。