ラララ吉祥寺
わたしは遺品整理の際、母名義のものにしか意識を向けていなかったことを思い出した。
「ちょっとお待ちになっていただけますか」
わたしはそう言い置いて、二階の納戸にしまった母の遺品をまとめたダンボールを取りに上がった。
衣類や雑貨の類はあらかた処分してしまったが、母の使っていたノートや手帳、通帳や家計簿、その他しまってあった手紙や新聞の切り抜きなどは捨てずに取ってあったのだ。
たしかその中に、わたし名義の古い通帳があったことを思い出した。
(普通預金の残高は、たしか随分前の日付でゼロに近くなっていた筈だけれど……)
記憶を手繰り寄せようとしても、不確かなことばかりで。
とりあえず箱ごと抱えて下に下りた。