ラララ吉祥寺

「ほら、これを見てください。

この絵葉書は僕が宏子に毎年送っていたものですよ。

確か最後に送ったのは……、ほら、これだ」

その手には、新緑を思わせる緑茂る山の風景が水彩で描かれていた。

この葉書には見覚えがあった。

毎年送られてくるこの絵手紙を母はいつも嬉しそうに眺めていたのだ。

『古い友人からよ』

それ以上何も付け加えることなく、閉じられた母の言葉。

それがわたしの父からの便りだと、どうして知る由があっただろうか。

「彼女の手紙には、いつも貴方のことが綴られていました。

貴方の成長と日常。

そうそう、貴方が書いた絵を送ってくれたこともありましたね。

文子が絵を描き始めた、と嬉しそうに伝えてきたのを覚えていますよ」

最後に送られてきた、その葉書の日付は四月二日。

母が亡くなる数日前のものだった。
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