ラララ吉祥寺
「僕はずっと彼女と離れて暮らしていましたから、今更彼女がこの世にいないと聞かされても、実感が湧きません。
貴方にしても、今更僕が父だと名乗ったところで、それが何だというところでしょう」
でも貴方は確かに僕の娘ですよ、と彼は言った。
「それはそうと、下宿人の方たちは今何処に?」
「えっと、一人は今入院中で、もう一人はもうすぐ帰宅すると思います」
「ご病気ですか?」
「いえ、出産で」
「ほぅ」
彼は驚いたようにそう口にすると、それ以上深くは尋ねなかった。
「それで今晩なんですが、実は急な帰国でホテルを取る暇がなくて、できたらここに泊めて頂く事は可能でしょうか?」
そのつもりでこちらに直行してしまったもので、と彼は恐縮して言った。
「えっ、はい、勿論。
だって、ここは山本さんの家でもあるのでしょう?」
「確かに資金は出しましたが、ここは貴方と宏子の家ですよ」
僕にとっては思い出でしかない、と山本さんは呟いた。