ラララ吉祥寺

「文子さんからお母様の話を聞くのは初めてかもしれませんね」

「ですね。わたしずっと母の事は思い出さないようにしていたのかもしれません。

何せ、突然の事故だったので実感なかったというのもあるんですけど。

何故か母には後ろめさがあって、素直に向き合うことが出来なかったので。

それを解消できないまま母が居なくなって、さらに後ろめたさが増したというか……」

「なんとなくわかります」

「だから、あんなに素直に母を求める拓馬君を見てたら、羨ましいなって」

「僕もそれは同感です。僕も母に甘えた記憶がないんでね。

母の機嫌を損ねないよう、顔色ばかり窺っていた記憶しかないんです。

でも……、もしかしたら、母はあんな風に僕に甘えて欲しかったのかもしれないな」

「お互い、可愛くない子供だった訳ですね」

「だからって、拓馬があんな風に文子さんに甘えるのは見逃せませんよ」

「甘えるって……、あれは寝ぼけて……」

「文子さんもまんざらじゃなさそうでしたし」

「そんなこと……、あります」

木島さんには嘘はつけない。

「正直でよろしい」

さ、僕らも寝ましょうか、と木島さんが立ち上がった。

「文子さんは僕に甘えてください。僕も甘えられるは嫌いじゃありませんよ」

どうやら今夜も大人しく寝かせてはもらえなさそうだ。
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