ラララ吉祥寺

そろそろ五才になろうとする我が息子、紡の幼い横顔を覗き見る。

シートベルトにガッチリを守られた小さな身体は確かに子どもなのだけれど。

ちょっと太目の眉と、意志の強そうな円らな瞳は紛れもなく木島さん譲り。

「かあぁしゃん?」

とわたしを呼ぶ口元は、少しわたしに似てるような気もする。

「ツムグ、今日の目標は?」

「ほじょりんなしでのれるようになりたい!」

「そ、じゃ頑張らないとね」

「がんばる!」

私の絵の仕事が次第に増えて。

紡が生まれてから書き溜めてきた水彩画を、「折角だから個展を開いてみんなに見てもらえば?」なんて木島さんに乗せられ、画廊を借りて小さな個展を開いた。

それが結構な評判になって、私は現在、年に二度ほど個展を開くにわか画家である。

当然家事に裂く時間も限られるようになって、紡は三才から保育園に通っている。

「子どもは遅かれ早かれ親の手を離れていくものですよ」

紡と離れることに一番抵抗があったのは実はわたしで。

当の紡はというと、初日から大はしゃぎで、あっという間に保育園に馴染んでしまった。

「愛されて育った子は、子離れが早いものです。

心配しなくても、ツムグが文子のこと、一番好きなのは変わらないでしょ」

保育園から帰った夜、今日の出来事を一生懸命伝えようと言葉を紡ぐ息子を見て、彼の世界の広がりを素直に喜ぶ気持ちになったっけ。
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