ラララ吉祥寺

「着きましたよ。

僕が荷台から自転車を降ろしてから、ツムグのシートベルトを解いてくださいね」

公園に隣接する駐車場に車を停めると、木島さんは一人車外へ出て、荷台に回った。

「はやくぅ〜」

「父さんの準備が出来るまで、ちょっと待って」

この身重の身体では、走り出した紡を追いかけることは儘ならない。

ほんと、男の子の運動量って半端ない。

「おりる、おりる、はやくぼくもおりるぅ〜」

「こらっ、あっ、つむぐ!!」

やみくもに身を捩ってどこをどう押したのか、3点ロックのシートベルトがカチャリと外れた。

スルリとチャイルドシートから身体を抜け出した紡は、私の大きなお腹を乗り越えて、窓から身を乗り出す。

「とうしゃ〜ん」

「ツムグ、もうちょっと待てないの?」

「まてな〜い」

足をバタつかせ、暴れる紡を窓から落ちないように捕まえるので精一杯のわたし。

「きじまさ〜ん、まだですかぁ?」

荷台の方からバタンと大きな音がして、木島さんがこちらに回ってきた。

「コラッ、ツムグ、脱走したな」

「なんか滅茶苦茶暴れたら外れちゃって」

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