ラララ吉祥寺
わたしの料理は、母仕込みだ。
小さい頃から、母を見よう見真似で手伝ってきたから。
玉葱のみじん切りも、大根の桂剥きも。出汁の取り方から、ホワイトソースの作り方まで。
何時何処で覚えたのか、母の料理はかなり本格的なものだった。
基本をきっちり叩き込まれていたので、作り方さえわかればその料理を再現すること自体、わたしにとっては割とた易いことだった。
大きく道を踏み外すことはないが、あくまでオーソドックスなのがわたしの料理。
芽衣さんはその点斬新だ。
冷凍たこ焼きにシュレットチーズとトマトケチャップを乗せてオーブンで焼いてみたり。
前日の南瓜の煮物に、シメジとゆで卵を加えホワイトソースをかけてグラタンにしてみたり。
まぁ、だいたいが洋風なのだけど。それがまた新鮮で美味しかったりするから驚きだ。
対して木島さんは和風一辺倒。
なんでも田舎のお婆さま仕込みだとか。
大根のなた漬け。竹の子の含め煮。ワラビの和え物。
何れも副菜となる常備菜が主で、作り置きが利くところが味噌だ。
彼の作る料理はどれもやさしい自然の味がした。
彼は自分の作った常備菜と朝一品のおかずを添えて、必ずお弁当を作って出かけた。
仕入れは人里離れた民家が多いので、食事を取る場所を探すのが一苦労なのだそうで。
弁当持参なら、何を気にすることなく何時何処へでも出かけていくことができる。
民家の庭先で弁当を広げると、それだけで話のネタになるし、お茶を出して貰ったり、時にはおかずを分けて貰ったりして自ずと親交も深まって一石二鳥なんです、と木島さんは笑って語ってくれた。