ラララ吉祥寺

わたしの作る食事を、誰かが喜んで食べてくれる。

そんなちっぽけなことが、こんなに嬉しいだなんて、今まで想像することさえ出来なかった。

「文子さんのハンバーグって、最高ですよね。

ふっくらジューシーで。

顔見てから焼いてくれるから、熱々だし」

それは母がいつもわたしにしてくれていた、日常そのものだったのだけれど。

たまに加わる芽衣さんの新作レシピとか、木島さんの作り置きの煮物に併せて、わたしもネットで新作レシピを探求したりして。

日々のルーティーンワークの筈だった賄いさえ、楽しい仕事と化していた。

「それにしても、僕のハンバーグ、大き過ぎやしませんか?」

「えっ、でも、男の人って沢山食べるのかと思って……」

「僕ももう37ですからね。若い頃みたいに大食いはしませんよ。そろそろ体重も気になる年頃ですし」

「あ、中年太りですか?」

木島さんアラフォーですもんね、と芽衣さんが笑った。

「でも、わたしもここに来て食べ過ぎかも。

なんか最近ウエストがきつくて。

文子さん、わたしも少しご飯控え目でお願いします」

芽衣さんがお腹の辺りを摘んで見せた。

「そうだね、健康の為には腹八文目、野菜中心を心がけます」

つい楽しくて、作り過ぎてしまうのは確かだった。

量を減らす分、品数を増やしてみようかな。野菜を使ったヘルシーな副菜を研究しよう。

なんて、あくまで前向きに生活に取り組むわたしに、誰よりも私自身が驚いていた。
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