ラララ吉祥寺

「あ、はい。直ぐ行きます。病院は何処ですか?」

幸いなことに、病院はわたしが行こうと思っていた武蔵野日赤だった。

わたしは、暫くの入院を覚悟して買い置きの歯ブラシやタオル、そして芽衣さんの部屋着や下着の替えを鞄に詰めた。

無断で部屋に入ることに戸惑いはあったものの、今は緊急事態だと自分に言い聞かせた。

急いだつもりだったのだけれど、病院に着いたのは30分余り後で。

既に飯塚さんの姿は病院にはなかった。

救急から移された芽衣さんの入院先は、やはり婦人科病棟で。

「ご家族の方ですか?」

「いえ、友人です」

「そうですか。

そういうことでしたら、ご本人がお目覚めになってから、ご本人了解の上、ご一緒に説明を受けていただけますか?」

「はい」

病室はこちらです、と案内された部屋で、検査を終えた芽衣さんが眠っていた。

「あの……、もしご家族と連絡が取れれば、知らせた方がいいのでしょうか?」

「それも含め、ご本人の意思を確認された方が良いと思いますよ」

何か事情がありそうですし、と担当の看護師さんは仕事に戻っていった。
< 83 / 355 >

この作品をシェア

pagetop