*政略結婚*
「……そんな」
由香は、ショックのあまり、その場に座り込んでしまう。
「…由香、本当にすまない。すまない」
父は、項垂れながら、何度もすまないと言い放つ。
しかし、由香には、それを受ける訳には行かなかった。
「父さん。私、なんとか頑張って借金返済して行くわ。」
「…由香?」
「死ぬ気で頑張れば…、一億なんて、すぐ返済出来る」
「ゆ…「父さん」」
「父さん、聞いて?」
由香は、父の言葉を遮って問いかける。
「私、結婚を前提にお付き合いしている彼がいるの。」
「……」
「確かに、そのお話を受ければ、苦労しなくて済むけど、私は、苦労してでも好きな人との結婚を選びたい。」
「…由香」
「だから、私はお見合いは受けない。」
「しかし、先方は既に準備を始めている。
明後日、圓照寺園でと。」
父は、顔面蒼白になりながら言う。
そんな父を見て、由香は苦笑する。
「なら、きちんとお断りを入れる為に、会うのは承諾します。
父さんにとって、大切な取り引き相手。
無下にはしません。」
「…………」
由香の言葉に、父は複雑な表情を浮かべる。
だが、由香は考えを変えるつもりはサラサラ無かった。
未来の為に。
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