それでも、愛していいですか。
奈緒はふと顔を上げて、すぐそばにある高層マンションを仰いだ。
窓にはそれぞれの明かり。
明かりの数だけ、そこに暮らしがある。人がいる。
それらを見て、ふと自分の存在がずいぶん軽いものに思えてしまった。
仮に、今、自分がこの街中で死んでしまっても、世間から見ればそれはきっととても小さなことで、新聞にも載るか載らないかの些細なことなのだろう。
そんな小さな私が悩んでいることなんて、本当にちっぽけなものなのだろう。
だけど。
それはきっと、みんなも同じだ。
自分なんてちっぽけだと気づいていながら、頑張っているのだと思う。
生きているのだと思う。
人は自分の小ささをわかっているから、誰かと寄り添いたいのかもしれない。
……阿久津先生は、どうなのだろう。
先生も、誰かと寄り添いたい時はあるのだろうか。
奈緒はそこまで考えて、自嘲気味に笑った。
「結局、なにを考えていても、先生のことになっちゃってる」
全然終わりにできていない。