それでも、愛していいですか。
店を出る頃にはすっかり暗くなり、夜風は生暖かかった。
「家まで送るよ」
「いいの?」
「女の子一人の夜道は危険だから」
「ありがとう」
「ただし」
「ただし?」
「俺、今日自転車で来たから、ここ、ね?」
そう言って孝太郎は、自転車の荷台にぽんっと手を置いた。
「うん」
孝太郎が自転車にまたがると、加菜もスカートを気にしながら横向きに荷台に座った。
「しっかりつかまっててね」
そう言うと、孝太郎は勢いよく自転車を走らせた。
「わっ」
身体のバランスを崩しそうになった加菜は、孝太郎の腰にしっかりと腕を絡ませた。
孝太郎の腰周りは細く、服の上からでも鍛えられた身体だとわかる。
加菜の胸は高鳴っていた。
緊張しながら、目の前の広い背中にそっと頬を寄せ、身体全体で孝太郎の体温を感じていた。