それでも、愛していいですか。
二人の唇が重なった。
「あ」
君島とシュンの声が重なった。
阿久津は慌てて唇を離した。
「ごめん」
「いたい……」
思いもよらない奈緒の言葉に、周囲の男たちは眉をひそめた。
「眼鏡が顔に当たった……」
「キスよりそっちかよ」
君島は呆れ顔で「酔いすぎだよ」と呟いた。
「大丈夫ですか」
阿久津はふにゃふにゃの奈緒を起こしておんぶした。
「うん、大丈夫だよぉ」
おんぶされている奈緒は、気持ち良さそうに目をつむる。
「帰りますよ」
「やだ」
「そんなこと言わずに。私と一緒に帰りましょう」
阿久津は奈緒をおんぶしたまま君島の方を振り返り、「こういうことは今回だけにしておいてください」と冷たく言い放って店を出た。