それでも、愛していいですか。
「今日はどうした?」
その問いに美咲は、バッグの中からカタログを取り出し。
「これ、うちの店の冬物カタログ。気に入ったのがあったら言って。社員価格にしておくから」
そう言って、阿久津に差し出した。
「ありがとう」
パラパラとカタログをめくる。
「うそよ。そのカタログはおまけ。本当の用事はこっち」
そう言うと、またバッグから何やら取り出した。
それは小さなスケッチブックだった。
「これ、この前実家に行った時にたまたま見つけたのよ」
差し出されたスケッチブックを阿久津はおそるおそる受け取った。
「実家に置いておいてもよかったんだけど……中身が中身だったから」
そう言われて、阿久津はスケッチブックを開くのが怖くなった。
見ようか見まいか躊躇(ちゅうちょ)していたが、美咲が開けるのを待っているようだったので、おそるおそる表紙を開いてみると。
そこには屈託ない笑顔をこちらに向けているただの学生の阿久津涼介がいた。
そして、絵の隅に由美のサインと日付、そして『親愛なる人』という言葉が添えられていた。