それでも、愛していいですか。
阿久津は大きく深呼吸をした。
美咲を見下ろす。
そして、左胸にある彼女の手をつかみ、そっと自分から離すと。
「俺は、支えてもらわなくちゃいけないような男か?」
美咲をまっすぐ見つめる。
美咲は少し動揺し、「そういう意味で言ったんじゃないよ」と静かに反論した。
「哀れな男として見ないでくれよ」
「そうじゃない」
美咲は大きく首を横に振った。
「悪いが、帰ってくれないか」
阿久津はうつむいたまま低い声で呟いた。
美咲が動けずにその場に立ち尽くしていると、「頼むから!」と少し声を荒げた。
普段声を荒げない阿久津にびくっとした美咲は、ただ唇をかみしめ、研究室を出ていった。
美咲が出ていくと、阿久津は力が抜けて椅子にへたれこんだ。