それでも、愛していいですか。
涙が出そうだった。
どうして……。
どうして先生はこんなに苦しんでいるのだろう?
わからない。
わからないから……つらい。
なにをしてあげればいいのだろう。
私には、なにもできない。
なにも、してあげられない。
なにもしてあげられないのって……とても、苦しい。
奈緒は自分の無力さが悔しくてたまらなかった。
少し歩くと、阿久津はおもむろに奈緒の傘を取った。
無理な姿勢で傘をさしている奈緒に気がついたようだ。
二人寄り添って、ようやく阿久津のマンションに辿り着いた。
阿久津を屋根のあるところまで送ると、奈緒はふぅと大きく深呼吸した。
マンションの明かりに照らされて、阿久津のコートが思いのほかずぶ濡れであることに気づいた。
「先生、早く着替えてくださいね」
奈緒が優しく声をかけたが、阿久津はただ立ち尽くしているだけでなにも答えない。
それが奈緒の胸を苦しくさせたが、どうすることもできず、「じゃあ、おやすみなさい」と呟き、振り返って、帰ろうとした時だった。