それでも、愛していいですか。
「言えないような人なの?」
その一言に、一瞬手が止まってしまった。
「まさか……あの、ゼミ生の……?」
その呟きに反論しない阿久津に、美咲は「冗談でしょ……」と漏らした。
「そんなの許されない。だって、彼女、まだ学生じゃない。それに、お姉ちゃんにどう説明する気?」
突き刺さった。
彼女が学生であることもそうだが、由美のことを言われるのがなにより辛い。
沈黙を守る阿久津を見つめながら、美咲は大きなため息をつき。
「涼介さん。聞いて。あの子のことが本気なら、彼女を諦めるのが愛情だと、私は思う」
美咲はまっすぐ阿久津を見つめた。
「まだ19か20歳(はたち)でしょ。そんな歳の女の子に、涼介さんの背負っているものを受け止めさせるのは、重すぎるわ。彼女の幸せを願うなら、重い荷物のない、同世代の普通の男の子と恋愛させてあげるのが、私は愛情だと思う」
美咲の声は、とても冷静だった。