それでも、愛していいですか。

もう、どうでもいい。

どうなったっていい。

なのに、阿久津先生が心を占領していて、息苦しい。

先生の、バカ。

バカバカバカ。

涙で濡れたクッションには、大きな染みができていた。

殻に閉じこもるように、布団を頭からすっぽりとかぶる。

その時。

ドンドンドンドン!と、荒々しく玄関の戸を叩く音がしたかと思うと、

「奈緒!奈緒!いるのか、おい!」

と、外で孝太郎が叫ぶ声が聞こえた。

奈緒は布団をかぶったまま、無視した。

放っておいて。

「おい!奈緒!」

孝太郎は、懲りずに戸を叩き続ける。

放っておいてってば!

「頼む、いるんなら開けてくれ!顔だけでも見せてくれよ!加菜ちゃんも心配してるんだ。お前の携帯の電源が切れたままになってるって」

……。

そう、なんだ。

加菜、心配してるんだ。

……それは、いけない。

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