それでも、愛していいですか。



結局、奈緒の前に阿久津が現れることはなかった。

自分がどうやって家に帰ってきたのか、ほとんど覚えていなかった。

どうして?

どうして……。

ベッドの中で何度も寝返りをうちながら、そればかり考えていた。

なにか、あったのかな。

それとも……。

やっぱり、私じゃダメだったのかな。

阿久津の顔を思い浮かべるたびに、涙が頬を伝う。

先生。

会いたいよ。

抱きしめてほしいよ。

ベッドの中で小さくなり、自分をひしと抱きしめた。



クリスマスも、その次の日も、奈緒は一歩も外へ出なかった。

誰とも話したくなくて、携帯の電源も切っていた。

無気力でなにもする気になれない。

部屋もまったく片づけられずにいた。

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