それでも、愛していいですか。

奈緒はその視線を立ちきるように、慌てて、

「えっと、大川さんは、阿久津先生の奥様の妹さん……なんですよね?」

なにげなくそう言うと、美咲の顔が一瞬こわばった。

「え?どうして知ってるの?」

奈緒がそのことを知っているのが、納得いかないようだった。

「えっ……前に、阿久津先生がそう言ってたから……」

おそるおそる答えると、

「そうなんだ」

美咲は独り言のように呟いた。

そして。

「ねえ、えっと……名前、なんだっけ?」

「相沢奈緒です」

「奈緒ちゃん。もう少ししたら、私昼休みなんだけど、一緒にランチでもどう?」

「え?」

突然の展開についていけず、思わず言葉が漏れてしまった。

「せっかく会えたんだから、ね!」

「は、はぁ……」

奈緒は押し切られる形で、なんとなく返事をしてしまった。

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