それでも、愛していいですか。

奈緒と美咲のやりとりを遠くから窺っていた店のスタッフが、美咲に気を利かせて、

「昼休み行っちゃってください」

と言った。

美咲はスタッフに「ごめんね」と一声かけて、

「じゃ、行こっか」

と奈緒を店から連れ出した。

「すぐそばにパスタのおいしいお店があるから」

そう言って、スタスタと歩き出す。

奈緒はただ黙って美咲について行った。

「あの店ね、たまに涼介さんも来てくれるのよ」

と歩きながら、美咲が言った。

それがどうも自慢話のように聞こえて、少し耳障りだった。

「そうなんですか……」

そういえば。

阿久津先生のスーツとYシャツ以外の姿を見たことがない。

休日は当然カジュアルな服だって着るのだろうが、いまいちピンと来なかった。

そのイタリア料理店は本当にすぐ近くにあった。

店内に入ると、二人は向かい合わせに座った。

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