嘘、鬼よ。














「いや、でもな…


『今日もきつなー、稽古』




土方が私に近寄って来ようとしたとき、平隊士数人の声がすぐ近くで聞こえた。



数秒もすれば、曲がり角から此方へやって来るのが見える。






「あ、副長、三冷さん。お疲れ様ですっ」

「お疲れ様ですっ」



平隊士は5人。

先程の話は聞いていなかったようだ。



私達に挨拶をして横を通りすぎてく。


別に私はこれといって実績はない、剣が強く事情が事情なために幹部にしてもらっているんだ。


それなのにこう、ペコペコと私に文句なく頭を下げる彼等はとても正直なやつらだとおもう。





ドンッ




「…!?」

肩に鈍い衝撃が走った瞬間。


『三冷ちゃん…』
『…っ……だから…』
『…粛清の』
『****』


F1レースの車が、ビュンっと去ってゆくかの様に幾つものビジョンが流れた。




それのどれもが現代のもの。

クラスメイトや使用人、友人の姿がはっきりと表れ、一瞬で消え去った。





「…すみませんっ!!」



目の前には頭を下げる青年。


「え?…あ、あぁ。大丈夫だ」



私がそういうと小走りで横をすり抜けてく青年。


先程の衝撃はこいつがぶつかってきたためか…。


……しかし、なんでビジョンが…?


今回は現代には戻らなかったな。

何処かホッしている自分がいてしまう。



…強い衝撃があると戻るのだろうか。
今回は衝撃が足りなくてビジョンだけ、みたいな…。

いやでも、前巡察の時に頭を打ったときはなにもなかった。




もし…、もし今目の前に、現代へ戻れる術があったとしたら私はどうするだろう。

迷わず帰るだろうか?
それともこちらに残るだろうか…?
















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