嘘、鬼よ。














「…ま、まぁ!!飲もう!!」


近藤さんも気を使ってか、明るく振る舞う。



近藤さんのその一声で再生ボタンが押されたのか、みんなはまた先程のように騒ぎ始める。





私は酒を床に置き沖田をチラリとみる。

土方のおかげで沖田からは免れたようだ。


私の酒の事など忘れてへらへらしている。





私はまた部屋の隅で焼き魚をしゃぶることにしよう。












「なぁなぁ三冷ー」



「原田。寄るな、触るな、こっち向くな!!」


う、酒臭い…!!



「えぇ、いいじゃんか」

「そうだ、そうだー!」




「げ、三馬鹿!」


目の前にはフラフラの平助と永倉と原田。

酒の席では一番からみたくない輩だ。


平助なんて私と同じくらいのくせして酒なんぞグビグビ飲んで、早死にするぞコノヤロウ。


…あ、こいつは長生きするんだっけ?


「げってなんだよー
三冷ってば釣れないなー」


「てかさぁ、三馬鹿とか言われんの正直あれなんですけどー。
この俺が原田と同じに称されるとか酷くない?」



永倉が両手を肩あたりまで挙げ、掌を上に向けて不服をアピールする。


ハッハーン?とでもいいたけだ。

てかムカつく。



「しっぱっつぁん、何気に酷いぜぇー
俺の繊細な心が今傷ついたよ」


酔っているためか、全然傷ついてるように見えない原田。


どこらへんがどのように繊細なのかさっぱりだ。

2文字以内で説明しろ。



「鬼!!」


「あ、声に出てたか」


「うん、しっかり。って、今の心の声だったの?」


「まぁ。」






「てぇかぁさぁぁ。」


原田の次にベロンベロンな平助がのそのそと近付いてくる。



永倉にせよ平助にせよ、童顔でチビはそれなりに愛くるしいから面倒臭い。


原田みたいにキモくないから、あからさまに邪険に出来ない。



「ずぅっと思ってたんだけどよーお?
三冷って髪の毛他の奴とは比べもんにならねーくれぇ、綺麗だよなぁ」



ポンポンと私の頭におかれる手。

そりゃ、シャンプー・トリートメント・コンディショナーをしっかり十数年間し続けましたからね。


この時代の人間の髪の毛よりかは綺麗だとはおもうけど。




「ホントホント。
生まれたての赤ん坊みてーな髪してるよなぁ」






さいですか。





「筆にしたい。」



ン…?

今永倉から不吉な感じの言葉出たよな?



「書き心地良さそう…」





「ぬ、抜くなよ!!?」



時速100キロで後退りする私。




恐ろしい…













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