世界が終わる時の景色
彼方まで続く水平線が、
逃避したふたりを夢見心地にさせてくれる。
「…でも、夜は少し怖いんだ」
「そうなの?」
「こんな所にあるから、真っ暗になるし」
「確かにそうね」
「真っ暗で、波の音だけが聞こえて。
ずっとここから眺めてたら、吸い込まれる気がしてさ」
「あら、日向でもかわいい事を考えるのね」
可笑しそうに、くすくすと笑う志乃。
「小さい時…よく来てた頃は、本当にそう思ってた」
「お父さんと来てたの?」
「いや、母さんと」
「日向のお母様…私、あまり知らないのよね」
記憶を手繰り寄せるように、志乃は遠くを見つめる。