世界が終わる時の景色
「…お?志乃か。ただいま」
「お久しぶりですわ」
「本当だな。一瞬誰かわからなかった」
「綺麗に成長しました?」
「ああ、母様にそっくりだ」
南十字の血を継ぐ者は代々体の弱い者が多く、志乃の母も例外でなかった。
志乃を産んですぐ亡くなり、志乃には母親の記憶がほとんどない。
「お父様、食事にしましょう?」
「そうだな」
父の手を引く彼女は、やはり嬉しそうだった。
毅然と振る舞っていても、
頼れる家族が居ない寂しさがあるのだろう。