世界が終わる時の景色
すっと彼女の横を通り抜け、
背中を向けて歩いて行く彼を追い掛ける。
苦しそうな、切なそうな志乃の視線には、気が付かずに。
「志乃の結婚に対する意欲は?」
書斎に入った瞬間、投げ掛けられた言葉。
「…あくまでも財閥のための結婚だと、
それが自分の役目だと、割り切っているようです」
「…役目、か」
感慨深げに呟いたきり、沈黙が流れる。
「私は、可愛い娘に政略結婚を強要するつもりは無い」
「はい」
「…嫌だ、とも言ってくれないのは…寂しい事だな」
表情は見えない。
だけど、声が寂しそうで。
返す言葉が見つからなくなってしまった。