蒼宮の都
『一夜』
月が照らす細い路地を、小柄な二つの影が駆けてゆく。
箱や割れた陶器の欠片を避けながら、積み上げられた箱を足場にし石造りの建物の二階へと滑り込むと、ラサは少女の手を引き、そっと息をひそめた。

壁の崩れた建物の東側には、月を背に遠く宮殿が見える。



『貴女が望んだその時に扉は現れる』

ラサは胸にさげた小さな鍵を服の上からそっと触れる。



眼下に響く怒号と人の気配が消えるまで、ラサは蒼く輝くその宮を見つめていた。

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