蒼宮の都
東の大国『華(ファン)』と、西の大国『ディマシュク』に挟まれた小国『ファティマ』。

長く貧しさに喘いでいたこの国を、商国として建て直したのは、賢王として名高い「シャムス」だった。
砂漠に囲まれながら豊富な地下水に恵まれたファティマは、香木を華国へ、スパイスをディマシュクへと輸出し、外貨を得た。
またファティマは、砂漠を旅する者達にとっては重要な中継地でもある。

王には二人の息子がおり、兄カマル・ディーンは聡明だが変わり者、弟シャール・ナハールはやんちゃだが武勇に優れていた。

「ファティマ」の価値にいち早く目をつけた華の王は、カマル・ディーンの花嫁として、第三皇女を送り込んだ。
ファティマ王にとってカマルの結婚は、目下最大の悩みの種であった。

両国王の利害は一致し、婚儀は問題なく進むかに思われたのだが――――


この政略結婚が、一人の少女を思わぬ運命へと導いて行くことになる。
< 2 / 26 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop