涙のあとの笑顔
「イーディ、ちゃんと食べて?倒れたら大変だから」

 さらに念を押すと、ゆっくりと部屋から出て行った。

「村の人達は全員捕まえたって」
「そう。かなり驚いたね」
「ごめんなさい」
「何の謝罪?」
「その、いろいろな人達を巻き込んでしまって。許してもらえるとは思っていない・・・・・・」

 ケヴィンは眉間に皺を寄せていた。

「何でフローラが謝るのさ?何も悪いことなんてしていないのに。昔も今も」

 昔も?どういう意味なの?

「村人に聞いた。過去のフローラのこと。どれも嘘に塗れていたけどね」
「どうして嘘だと?」
「いくつか質問をしてみたんだよ。そしたら実際に悪いことをしているところは一度も見ていない。ただ、好きな女の子が泣いていたからフローラを悪者と思い込んだ。その女の子のことも聞いたけど、怪しさが滲み出ていたよ」
「そうだよ、あの女の嘘に私は嫌な目にあってきた。ずっと」
「頑張ったね」

 一瞬、何のことかわからなかった。

「追い込まれたのに、それでもこうして生きているなんて、本当にすごいよ」
「ケヴィン、私のこと、好き?」

 質問の返答の代わりに不満を漏らした。

「夜中にずっとキスをしていたのに・・・・・・」
「言葉にして」
「・・・・・・好きだよ、ずっと好きだ」
「私もケヴィンが好き」

 抱きしめあって、口付けを交わした。
 やっと心から嬉しいと思うことができた。考えてみれば、私もずっと好きだった。

「もうすぐでフローラの誕生日だね」
「十九歳になるのね」

 十八歳はいろいろな出来事があったな。彼がいなかったら、歳をとることができなかったかもしれない。

「その日、予定を入れたら駄目だよ?」
「でも、イーディが祝ってくれるみたいなの」

 頬を膨らませ、綺麗な顔が台無しになっている。

「俺、絶対に休みを取るから」
「仕事に行って」
「休暇をとれるから心配しなくていいよ。決まり」

 もう決定しちゃっているよ、この人。
 ケヴィンが一番楽しそうと静かに笑った。
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