涙のあとの笑顔
花と就職
 久しぶりに薔薇園へ行くと、昔と変わらず、色や香りで薔薇の美しさが咲き誇っている。

「フローラ」

 呼んだ人は噴水の前に立っていたレナードだった。
 彼は薔薇にはあまり興味がないはずなのにこの場所にいるなんて珍しい。

「花に興味がなかったんじゃないの?」
「お嬢ちゃんがここにいる気がしてな」
「当たり」
「わかっていたけどな。こっちに向かっているところを見かけたから」
「何だ、そうだったの」

 レナードは私が怪我をしたところを集中して見ている。

「もう傷は大丈夫みたいだな」
「おかげさまで」

 それほど重症でなかったから、回復は早かった。

「あの、ニールさんは・・・・・・」
「あいつは何もしなかった。誰かを傷つけることも、お嬢ちゃんを裏切ることもな。むしろ、助けたくらいだから捕まっていない」
「そう」
「それより他に言いたいことがあるんじゃないのか?」

 はっとして顔を上げた。何を言いたいのか、わかっていそうな顔をしている。

「レナードに話したいことがあるの」
「へえ?」
「私、レナードには本当に感謝をしているよ。昔も今も見捨てないでいてくれて、ずっと傍にいてくれて」
「お嬢ちゃんは選ばないのか?俺のことを。これからも?」

 もう私の言いたいことを先読みしている。

「うん。私、ケヴィンを選ぶ。恋人にはなれないとずっと思っていたけど、それは私が壁を作っていただけ。ケヴィンも私を好きでいてくれたの」

 今でも許すことはできないけど、もう距離を伸ばしたくない。

「馬鹿だよな。こんないい男は他にはいないぜ?」
「だろうね」

 糸が切れたようにレナードは何も言わなくなった。私も何を言ったらいいのかわからなくなった。

「旅・・・・・・」

 微かな声を聞き取れなかった。

「何?」
「いや、俺は祝福できない。長く続くとも思えない」

 さっきまで沈んだ顔をしていたが、今はどこか吹っ切れたような顔に変わっている。

「俺を振った仕返しにもうしばらくここにいることに決めた」
「・・・・・・・・・・・・」
「あいつもむかつくしな」

 レナードの立場からすればそうなるよね。

「噂をすれば何とやらだな」

 視線の先にはケヴィンが立っていた。私が前に進む前にレナードがケヴィンに近づいていた。何をするのだろうとドキドキしていると、何か話したあと、城の中へ入った。

「レナードと何を話していたの?」
「ちょっとした話だよ」
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