涙のあとの笑顔
「何て言ったの?」

 私もステラも聞き取ることができなかった。

「ただの独り言」
「ここに来たばかりは右も左もわからなかったよ」
「初めての場所は誰だってそうだよ」
「最初に出会ったのがケヴィンなんだね」

 どうしたらいいのかわからず、涙も流せず、ひたすら歩き続けていたときに助けられた。
 出会わなかったらどうなっていたのだろう。その辺りで倒れていただろう。
 誰かに助けを求めることすらできずに。
 自分でも気づかずにケヴィンの手を握り締めていた。ケヴィンも強く握り返していた。
 できることならずっとこうして繋いでいてほしい。
 ケヴィンも同じことを考えてくれていたらどんなにいいか。

「お姉ちゃん、今度はあっちに行きたい!」

 早く早くと腕を引っ張るので、足がもつれないようについて行った。
 この日はほとんどステラがリードして行った。

「たくさん歩いたね」
「足が痛いね」

 ステラを店まで送って行った。

「とても楽しかった!いろいろとありがとうございました!」
「どういたしまして。またね」

 私達は城へ戻ることにした。イーディが待っているに違いない。
 イーディのお気に入りのお菓子を片手に城の中へ入った。
 しばらくの間、ステラから手紙が来なかった。どうしたのだろう、毎日送られていたわけではないが、ここまで送られてこないのは初めてだった。
 もしかして何かあったのかと、こっちから何通か送ってみたが返事はなかった。

「ステラ、どうしたのかな?」
「一度、行ってみる?」
「うん、今日行くね」
「私もついていくわ」

 ステラの店へ行ったが、ステラはいなかった。ステラの母親の話によると、学校のイベントの準備があるので、それを手伝うために学校にずっといるらしい。

「そんなことを言っていなかったよ」
「後から伝えるつもりだったのかもしれないわ」
「とりあえず何事もないみたいだからほっとした」
「城へ戻る?」
「せっかく外へ出たから、もう少し歩こう」
「そうね。無事とわかったしね」

 数日経ったある日、ステラから手紙が届いた。そこには日にちと時間、待ち合わせ場所が書かれていた。すぐに向かうと、ステラが待っていた。

「久しぶり、ステラ」
「お姉ちゃん、手紙を書かなくてごめんね」

 いつもの笑顔がそこにはなかった。

「どうしたの?」
「実は内緒にしていたことがあったの」
「何?」
「あの鍵をなくしちゃったの。大切なものなのに!」
「なくした!?」

 鍵ってずっと前に見せてくれたものだよね?
< 38 / 123 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop