涙のあとの笑顔

武器と嫉妬

　イーディの話によると、朝に私を起こしに来たときにケヴィンがしっかりと抱きしめて眠っていたらしい。ケヴィンをベッドから引きずり、ドアの外へ移動していたときにケヴィンは起きた。寝ぼけていて、ケヴィンの部屋にフローラがいると思い込んでいたようだ。

「朝から衝撃的なものを見てしまったわ」

　ミルクを飲み、心を落ち着かせていた。
　
「フローラ、今日は何かするの？」
「えっと、武器を買いに行こうと思っているよ」
「金は？」

　そのとき一瞬、言葉に詰まった。

「自分で払う」

　ケヴィンが先に朝食を終え、いったん部屋を出て、再び戻ってくると、テーブルにお金を置いた。

「これだけあれば、好きなものを買えるでしょ？」

　こんな大金を目にすることはほとんどない。

「いらない、自分で買うから」

　パンに手を伸ばすと、金を握らされそうになったので、慌てて引っ込めた。

「ケヴィン、食事中よ！」
「素直に受け取ればいいだけだよ」
「嫌！」
「でもフローラ、本当に自分のお金で買うなら、ほとんど残らないでしょ？」
「それは！」

　ケヴィンに正論を言われ、いらっとする。

「受け取らないなら今日は仕事に行かない」

　ちょっと、人のベッドでゴロゴロしないでよ！猫じゃないのだから！

「さっさと行きなさいよ！制服が皺になるわよ！」　

　イーディが布団を引き剥がしても動く気配がない。

「フローラの匂いがする」

　頭痛がする上に朝食の味がわからなくなってきた。味覚障害になるかもしれない。

「顔色が悪いよ、フローラ」

　それはあなたのせいですから！
　そんな心配そうな顔で言わないで！

「そりゃあ、そんなことをされたら無理ないわよ」
「話をもとに戻すけど、本当に受け取っていいんだよ？他の人達にはこんなことをしないけど、フローラなら喜んでするよ」
「気持ちだけ受け取る。お金は本当にいいから」
「もっと甘えてくれていいのに・・・・・・」

　そう不満を漏らしながら、仕事へ行った。
　ケヴィンの言うことは正しかった。今持っているものを使えばぎりぎり足りるか、下手をすれば足りないかもしれない。武器店にしょっちゅう足を運ばないから、今はどんなものが売られているのか把握していない。

「何かいい方法はないかな？」
「何がだ？」
「わっ！アンディさん！」
「危うくぶつかりそうになった。そういう趣味なのか？」
「そんな趣味は持ち合わせていません！」
「それでどうしたんだ？何か悩んでいるように見える」