涙のあとの笑顔
 さっきまで笑顔だったケヴィンは今は無表情になっているから、恐怖が募る。それでも私は足掻くことをやめない。

「怯えているくせに反抗的な態度をとるんだね」
「いつまでこうしているの?朝まで?」

 だとしたらいくら何でも怖い!

「襲って欲しいの?」

 ケヴィンは一気に顔を近づけた。

「そんなんじゃない!わかっているでしょ!?」
「大人しく目を閉じなよ。暴れられると、心がくすぐったくなる」

 そんなことを聞きたくない!ケヴィンが出て行けば眠るわよ!
 ケヴィンはどこか懐かしそうに遠くを見るような表情をしていた。

「あのときから、いや、戦う前から勝ち目がないことくらい理解していたよね?それでも勝負をした」
「そうよ、そう仕向けたのはケヴィンよ」

 本気を出されれば、確実に殺されていた。足が竦みそうになるのを我慢し続けた。

「負けているのに、それでも俺にぶつかってきた」

 それがこんなにも可愛らしいものだなんて思わなかった。これを言ったら、喧嘩になるから俺だけの宝物としてしまいこんだ。
 フローラを見ると、何度も瞼を閉じたり開けたり、交互のことをしていた。

「ケヴィン、私は」

 どうしよう、眠い。だけど言わなきゃ。

「ケヴィンのしたこと、ずっと許さない・・・・・・から」

 私の言ったことはケヴィンに届いたのかな。
 それを確認することができず、私は深い眠りへと落ちて行った。

「おやすみ」

 フローラに布団をかけて、その中に俺も入った。フローラの寝顔を見ていると、誘われるように唇にキスを落とした。

「んんっ」

 起きたのかと見るが、小さな寝息を零している。

「許さないか・・・・・・」

 フローラの中にある信頼を傷つけたのは俺。俺の信頼を強くしたのはすやすやと眠っている大切な存在。

「もっと早くこうすれば良かった」

 抱きしめ、頭を撫でながら、目を閉じた。
 目が覚めたとき、フローラと何をしようかと考えながら、フローラのぬくもりを感じ続けた。
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