涙のあとの笑顔
「お嬢ちゃんと話しているところを窓から見ていた」
「何を?」
「あの女の本性。悪口を言われたって言って、嘘泣きしたら男達が取り乱していたって嘲笑っていた」

 だからこの人は知っていたんだ。唯一真実を見たものが目の前にいた。

「俺もあんたもいくら本当のことを言ったって、信じないだろう。一度植えつけられたものはそう簡単に変えることはできない」

 暴力から逃れて助けを求めると、別の人が加わり、暴力が繰り返される。

「狂っている」
「俺もそう思うな。真実を知ったら、あいつらはどうするんだろうな?」
「さあ」

 ひたすら謝るか、あるいは開き直るかのどちらかだろう。それが容易に想像することができた。
 
「絶望しているな。無理もないか」
「ここを出ても幸せなんて来ないと思う」

 むしろこの中が安全なのではないかと思うようになってきた自分を鼻で笑い飛ばした。

「あいつらの思い通りにこれからもなる気か?好き放題させて。俺だったらそんなことはごめんだ」
「私だって・・・・・・」
「どうしたいんだ?」
「私、もっと強くなりたい。あんな人達より強い力が欲しい」

 人を馬鹿にすることしかできない、真実を知ろうとしない。
 悔しさを抱えたまま死ぬのなら、彼らを思い知らせるという目的を持つことにした。
 それが私の生きる理由。
 
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