涙のあとの笑顔
「私がいるのに寂しいのですか?」
「そんなんじゃないよ」
「ときどき寂しそうにしています。ごめんなさい、フローラ様。私がいながら・・・・・・」

 イーディ、どうかそんな悲しそうな顔をしないで。

「私が男性だったら少しは好意を持ってくれたのかしら?」
「イーディが男だったら?」

 今は口喧嘩で済んでいるけれど、力技で喧嘩になったら困る。二人なら有り得る。

「顔色が青くなっていっていますが何を考えているのですか?」
「えっと・・・・・・」

 どうしたものかと必死に言葉を拾い集めようとした。

「想像はつきます」

 困惑した表情をしていると、イーディがすっと表情を変えた。

「もうすぐですね。フローラ様の誕生日」
「もうすぐって、まだ二ヶ月以上先だよ」

 まだ遠い未来。

「すぐに来ますよ。待ち遠しいですね」
「イーディ、自分の誕生日じゃないのに・・・・・・」
「同じようなものですよ!」
「同じ?」
「私にとって大切な日ができました。これはとても喜ばしいことですよ?」

 自分の誕生日を祝ってくれた人はほんの数人だけだった。
 私はもちろん喜んだけど、本当に祝ってほしい人には最後まで祝ってもらえなかった。

「ケヴィン様に独占されないようにしなくては!」

 彼の名前が出て、足を止めてしまいそうになった。

「ケヴィン?」
「はい!前にフローラ様について二人で話していたのです」
「どんな話?」
「ここで住むようになってからの変化や誕生日について」
「ケヴィンは何て?」
「来年も自分の誕生日を楽しみにできるような祝い方ができたらいいな」
「なっ!」
「そうおっしゃっていました」

 ケヴィンがそんなことを言っていたなんて・・・・・・。
 それ以上は何も言うことができなかった。何を言ったらいいのかわからなくなった。

「何か欲しいものはありますか?」
「うーん、特にない」
「ではゆっくり考えますね」
「考える?何を?」
「誕生日に何を贈るか。時間はたっぷりとありますから」

 ポカンとしている私と目を合わせてから歩く先へと向き直った。
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