涙のあとの笑顔
「何か食べようかな?」

 皿に次々と載せて食べて、美味しさを噛みしめていた。

「踊る前に腹ごしらえか?」

 隣を見ると、タキシード姿のレナードがいた。

「ケヴィン達といたけど、あの状態なの」

 さっきよりも女のこの人数が増えている。本当にもてるな。

「一人で退屈だろう?しばらく相手をしろ」
「いいよ。そうだ、手紙を読んだよ。イベントってこのことだったのね」

 レナードの手紙に近々イベントがあると書かれていた。ダンスパーティとは書かれていなかったので、数十分後にその情報を得た。

「そうだ。あ、今はその辺でやめておけよ。食い過ぎると動けなくなるからな」
「そこまで食べない!」

 空になった皿をテーブルの上に置き、すっと私の前に立ち、手を差し伸べた。

「よろしければ一曲、俺と踊っていただけますか?」
「レ、レナード!?えっと、はい!」
 レナードの手を取ると、引き寄せられ、くるくると回った。

「ダンスもできるの?」
「まあな」
「できることが多過ぎ・・・・・・」

 さっきからずっと踊っているけど、一度も足を踏んでいない。良かった、怪我人を出したらどうしようかと思った。
 曲が終わると、ケヴィンが近づいてきて、レナードが前に出た。

「楽しんでいる?レナード」
「ああ、もちろん」
「ノアさん達は?」
「奥で休憩している。さっきまで女の子達の話し相手になっていたから」
「フローラが一人で寂しそうにしていたから、ずっと一緒にいた」
「ずっと?ああ、踊っているところは見たよ」

 不機嫌を上手く笑顔で隠している。レナードはそれを見て、ちょっと楽しそう。

「フローラ、次の曲が始まったよ。俺とも踊って?」
「う、うん!」

 中央へ回りながら行き、音楽に合わせて踊った。

「もう少し力を抜いて」
「こう?」
「そう。まだ緊張している?」
「少し」
「大丈夫だから、俺にまかせて」

 さらに抱き寄せ、耳元で囁いた。
 鼓動が早くなっていくのがわかった。本人にも聞こえているよね。

「激しくなっている」

 やっぱり気づかれた!どうしよう、顔が見れない!

「俺の心臓の音」
「ケヴィンの?」
「気づいていなかった?言わなきゃよかった」

 がっかりしていたので、くすくすと笑ってしまった。
 一気に緊張がほぐれて、ダンスを楽しめた。

「フローラ!やっと会えた!」
「ルアナ!こうして会うのは久しぶりね!」
「あっちで話しましょう!ケヴィン、ちょっと借りるわね」
「フローラは物じゃない」
「美味しいものがたくさんあるから。ね?」
「い、行くね」

 ケヴィンが不機嫌になっていても、ルアナはご馳走に目を奪われているので、一度も振り向かなかった。
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