甘え下手
「ま、それが現在進行形で恋人がいるって証拠にはならないでしょ」

「やっぱり男の人ってそういうものなんですか……?」


ジットリした目で見ると参田さんは「さあ、人によるんじゃない?」とうまいこと逃げて肩をすくめて見せた。


「昔の彼女のモノとか!」

「それはないです」

「なんで比奈子ちゃんに分かるのさー」


つい数か月前までさーちゃんの耳にあったからですよ、なんてさすがに言えないから黙っておいた。


「でもそれなら全然失恋じゃないじゃん! まだチャンスあるって!!」

「はあ」

「明日の夜がチャンスだよ!」

「……仕事の出張ですよ」

「勤務時間外に男と女がナニしてようが自由でしょ! いけいけ! 比奈子ちゃん!」


参田さんがあまりにも明るく、「落ち込むようなことじゃない」と言ってくれるから、少し気持ちが明るくなって、一緒に笑った。
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