甘え下手
まどろんでる感覚もなしに、突然ガチャリという音で意識が覚醒した。


えっ、私、寝てた!?


慌てて枕元の時計を確認すると、深夜の0時を過ぎたところだった。

約束の時間を寝過したことに気づき、ザッと全身から血の気が引いた。


ウソ、どうしよう!


ベッドから飛び起きて、バッグをまさぐってスマホを確認する。

着信履歴は三件。


うち一件は宇野さんで、残りは櫻井室長からだった。

慌ててかけ直そうとして、今更な時間なことに気づいて、ボタンを押す手が躊躇する。


もう皆とっくに解散してしまった頃だろうか。


迷っていると隣の部屋からかすかに物音が聞こえることに気づいた。

意識をそちらに集中すると、シャワーの音だと分かる。


そうか、きっと櫻井室長が部屋に帰ってきた音で私は目が覚めたんだ。

こんな夜中に非常識だって分かってるけど、櫻井室長が起きているのなら、どうしても一言謝りたい。
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