甘え下手
「俺、ひどい男だよ。比奈子ちゃんから聞いてない?」

「え? お姉ちゃんから? 聞いてないよ」


薄く笑って問いかけたのに、帰ってきた答えは意外なものだった。

だけどすぐに納得する。


そうだな。

あの子は噂を鵜呑みにして他人に広げたりするタイプじゃない。


「やっぱ損な性格……」

「え? 何が?」

「なんでもない。だけど沙綾はダメだよ」

「なんでー!?」


ぷくっと頬を膨らませて心外だと身を乗り出す沙綾に、心の中でつぶやいた。


比奈子ちゃんの妹だから、お前はダメだよ。

遊びの範疇の女には絶対に入らない。


「俺に遊ばれても、痛い目見るだけだよ」

「遊びでもいいよ。私が本気にさせる」


そう言って真っすぐ俺の目を見てくる沙綾に、酔ってる様子は微塵もなくて、彼女なりの本気を俺に伝えてきた。


「自信家だな、沙綾ちゃん」

「自信なんてないよ! だけどやってみなくちゃ分からないじゃん!」
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