甘え下手
聞こえてくるのが無機質な機会音に変わったとき、俺は自分の失敗を多大に悟った。

何だか俺は大変なことをやらかしてしまったらしいと。


「阿比留さん? どうしたの?」

「切られた。余計なこと言いすぎたっぽいな」

「あれぐらいじゃ、お姉ちゃん動かないと思うけどなー」

「だよな……」


そう言いながらも違和感が拭えない。

あの子があんな態度取るなんて、笑い通せないなんて。


何かよっぽどのことがあったんじゃないかと。


「阿比留さん?」

「あ? あぁ、悪い。送ってく」

「家の前まででいいですからね。こないだお姉ちゃん送ったのに、今度は私を送ってきたら、阿比留さんお兄ちゃんにブッ飛ばされちゃうから」


そう言って沙綾は笑ったけれど、俺は上の空だった。

そのままタクシーで沙綾を家まで送って、その後マンションに一人で帰った。


彼女の最後の声が耳についてなかなか眠れなかったけれど、缶ビールを飲んで無理やり寝た。
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