甘え下手
どうしてだろうか、あの時からイライラが止まらない。

百瀬比奈子が大阪出張に出かけたと聞いたときから。


だから煙草の本数も減らないし、平日なのに飲み過ぎて、朝から頭痛がした。


今だって。

なんでこんな寒い夜に、駅の改札になんかいなきゃいけないんだと、理不尽に思う。


仁から新幹線の帰着時間を聞きだすなんて、俺はストーカーか。


大体、百瀬比奈子は櫻井室長と一緒に帰ってくるはずだ。

二人が仲良く寄り添って歩いてきたら、俺はどうするつもりなんだ。


自分の行動が自分でも理解不能だから、イライラはさらに増してクッと眉間にシワを刻んだまま腕を汲んで改札前の壁にもたれかかって立っていた。


だけど俺の中の何かが告げていた。

メールや電話じゃ駄目なんだと。


百瀬比奈子の顔を見て、自分の考えの是非を確かめないと、このイライラは収まらない。

そんな俺の人相は相当悪いのか、誰もが目を合わせずにコソコソと俺の前を通り過ぎて行った。
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