甘え下手
百瀬比奈子はハンカチを鼻に当てたまま、ぼんやりと俺の言ったことを考えてるようだった。

そして薄く微笑むと首を振った。


「いいです。このままで。結果は変わらないし。相手に迷惑かけるような告白なら、しない方がいいんですよ」

「……その損な性格直さないと」


百瀬比奈子が俺の顔を見て柔らかく微笑んだから、その先が言えなくなった。

俺の言おうとしていることなんて、とっくに分かっている、そんな表情をしていたから。


どうしようもないな、と俺も笑った。

何故ならばそんな百瀬比奈子だからこそ、俺がここにいるわけで。


その俺が言ったところで、そのセリフには何の信ぴょう性もない。


「俺って物好きなのかなー……」

「え?」


百瀬比奈子が首を傾げる。


鈍感。

俺は笑いながら百瀬比奈子の涙のアトを拭った。
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