甘え下手
「何？　図星？」

「……分かんないです」


いつもの通りからかったつもりだったのに、真剣な声が帰ってきて俺はちょっと驚いた。

彼女がそんなことを言うだなんて。


一度、俺の前で泣き崩れたことで、彼女の壁まで崩れてしまったのかもしれない。


「……やっぱり阿比留さんのお家には行けません」

「……なんで？」


つかまえたと思ったら逃げて行く、相変わらずの百瀬比奈子に俺はイラっとした。

拒否権なんてねえんだけど。


「前に妹に男取られた過去があるかって訊きましたよね……？」

「ああ」

「私の好きな人とさーちゃんが付き合った過去はありません」

「……そう」

「さーちゃん、意図的にそうしてくれてたのかもしれません……」


あの妹が？

そんな風に思ったけれど口に出したら彼女が怒るのが目に見えていたから、黙っておいた。
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