甘え下手
「声が聞きたかった、とか言って欲しいの?」


誘った俺からそういう言葉を引き出したいのかなと思った。

この子真面目そうだし。


そういう気持ちの裏づけがなきゃ、俺の家になんか上がらないって気持ちの表れなんだろうかって。

返事をはぐらかして百瀬比奈子の気持ちを探ろうとした俺に、彼女はめっそうもないという風に首をぶんぶん振った。


「ち、違います! そんなこと思ってません……!」

「じゃ、何?」

「な、なんでわざわざさーちゃんといるのに私に電話かけてきたのかなって……」


言いながら百瀬比奈子の声がだんだん小さくなって、俺は彼女の言いたいことがようやく分かった。


「俺が沙綾と一緒だったのが気に入らねえの?」

「ち、ちが……」


否定しようとした彼女の言葉は、さっきと違って途中で止まってしまった。

そのまま難しい顔をして黙りこんでしまった。
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