甘え下手
「妹がコンプレックス、とか?」

「……え」


ピシリと愛想笑いも固まる。

だって、妹本人の前でこんな話されるとは思ってもみなかった。


「翔馬、比奈子ちゃんイジめんなよ! こんな可愛い妹がいたら卑屈にもなるよなあ」


参田さんがフォローにもなっていない、フォローに入ってきて、私は猛烈に恥ずかしくなった。

皆に卑屈って思われてるんだって。


「妹に男取られた過去あるパターン?」


阿比留さんの言葉がザックリ私の心を切り裂くのと、阿比留さんの顔にオレンジの液体と氷とが、ぶちまけられるのとが同時だった。

眉間にシワを寄せて目を閉じた阿比留さんは、一瞬でびしょ濡れになったけれど、それでも動じることはなく、迷惑そうに顔を振って水滴を払っただけだった。


テーブルの上には四角い氷がゴロゴロと転がっている。

参田さんはあっけにとられて、目をパチパチさせていた。


「いい加減にしてください! 初対面で失礼じゃないですか!」


空のグラスを持って、目を真っ赤にして立ち上がっていたのは隣に座っていたはずの妹だった。
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