甘え下手
「さ、さーちゃん、落ち着いて……」

「ごめん、お姉ちゃん。私、帰る」

「え、えっと……」


どうなだめようか迷っているうちに、沙綾はバッグをつかんで店を出ていってしまった。


その場限りの相手ならいざ知らず、この人達は同じ会社の同僚だ。

私まで立ち去るわけにはいかない。


「ごめんなさい、大丈夫ですか?」


慌てておしぼりを渡そうとすると、阿比留さんはそれを受け取らずに、自分のおしぼりで顔を拭いた。


「ベタベタする」

「ファジーネーブルだからな~。せめてウーロンハイならよかったな」

「そういう問題じゃねえ」


阿比留さんと参田さんは普通に会話をしていて、特に怒ってる様子はない。

私はとりあえずテーブルの上の氷を拾って、自分のおしぼりでテーブルの上を拭いた。


新しいおしぼりを店員さんにもらって、それを阿比留さんに押しつけ、ダメになった料理を下げていると、顔を拭き終わった阿比留さんがふと私を見てきた。
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