甘え下手
明日会社……だけど。

お泊まり!?


私、今日阿比留さんの家に泊まっちゃうの!?


落ち着いていた心拍音がまたすごい勢いで走り出す。

頭の中でたくさんの小さな自分が和太鼓を叩きまくっている。


「何、どうしたの?」


阿比留さんはそんな私の焦りを全く理解していない様子。

泊まることが当然だと思っている。


いや、キスを受け入れて告白じみたことまで口にしちゃったんだから、ここで拒否る方が不自然なのかもしれないけれど!

こ、心の準備が……!


さすがに身体でなぐさめられるだけとはもう思わない。

だけど気持ちを自覚したばかりなのに、こんな急展開どうしたらいいのか分からない。


「どうした?」

「いやっ、泊まるつもりで来てないんで準備が……」


すると阿比留さんはホレ、とでも言うように私の旅行バッグを指さした。
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