甘え下手
もうどうにでもなれーと頭の中で捕食されるヒナになった自分を想像する。

一緒にベッドに入ってギュッと目を閉じると、阿比留さんにふんわりと抱きしめられた。


こっちは心臓壊れそうなぐらいドキドキしてるのに、阿比留さんは「こうしてると落ち着く」と正反対のセリフを口に出している。


「お、落ち着きますかね……?」

「あー、比奈子ちゃんがここにいるなーって実感できる」

「……」


どうしよう、ちょっと嬉しいかも。

阿比留さん、そんな甘いセリフも言うんだ。


「いないとさ、考えるじゃん。今頃ひとりで泣いてんのかなーとか」

「……たぶん泣いてた、と思います」


私の告白に阿比留さんはフッと笑った。


「ずいぶん素直になったじゃん」

「……」


自分でも不思議に思う。

今までだったら泣いてる自分なんて誰にも見せたくなかったのに。


阿比留さんに無理やり素直にさせられた、というか。
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