甘え下手
そのまましばらくポツポツと何でもない話をするうちに、阿比留さんは私を抱き枕にしたまま目を閉じてしまった。

必要以上に緊張していた私は全身の筋肉がふにゃふにゃと脱力していくのが分かった。


期待していたわけじゃないけど、ものすごく意識していた自分が恥ずかしい。

阿比留さんには全くその気はなかったというのに。


だけど私が相当に緊張していたことぐらい、阿比留さんなら気づいていそうなものなのに、あえて何も言ってくれなかったのはまたデビルさんの意地悪のひとつだったに違いない。


だけどやっぱり『身体でなぐさめる』だなんてあの時の冷たい言葉は本気じゃなかったんだと知って安堵する自分がいた。

あの時の阿比留さんがどういうつもりであんなことを言ったのかは分からないけれど。


だけど阿比留さんの温もりを背中に感じて、今日一人じゃないことに安心と幸せを感じるのも確か。

それは心が伴ったものだからこその幸せなんだけれど。


阿比留さんはどうなんだろう。

どうか怖い夢を見ませんように。


私は阿比留さんの規則正しい寝息に誘われるように、心地良い眠りへと落ちていった。
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